MLB

2024年07月17日

パワーヒッター大谷の立ち位置

ホームランバッター大谷のMLBでの立ち位置について、ライバルと比較してみよう。

2021年のAmerican Leagueの本塁打王Vladimir Guerrero Jr.、Salvador Perez、2023年のNational Leagueの本塁打王Matt Olsen(本塁打54本)、Ronald Acuña Jr.(2023年本塁打41本で、膝関節前十字靭帯の損傷でリハビリ中)と言ったスラッガー達が上位に並んでいないのは、寂しい。2年連続で40本以上打つのは、スーパースターのみが達成できる試練の技とも言えるが、大谷には2年連続を目指して欲しい。

ホームラン、長打にする要素は、打球速度(スィングスピードが速く、バットのスィートスポット(芯)で捉えれる)とコンタクト精度(空振りせずに、想定するタイミングで、外野フェンスか内野手がジャンプしたグローブを超える打球角度とフェアゾーン方向に飛ばす)の2つ。ピッチャーの能力や運に左右される結果ではなく、運動能力、スキルとスタイルに焦点を当てて、パワーヒッター4人(ヤンキースのAaron Judge、Juan Soto、Giancarlo Stanton、フィリーズのBryce Harper)を、Statcastのデータとバッティングメカニクスで比較して、パワーヒッター大谷を深堀りしてみた。

大谷 バッティングフォーム 2014
Judge バッティングフォーム 2014
Soto バッティングフォーム 2014
Harper バッティングフォーム 2014
Stanton バッティングフォーム 2014

(2024年7月14日終了時のStatcast使用。順位対象はMLB)

ホームラン数

Aaron Judge(ヤンキース)34 1位
大谷(ドジャース)29 2位
Juan Soto(ヤンキース)23 6位
Bryce Harper(フィリーズ)2111位
Giancarlo Stanton(ヤンキース)1820位

長打率

Aaron Judge(ヤンキース).679 1位
大谷(ドジャース).635 2位
Juan Soto(ヤンキース).5588位
Bryce Harper(フィリーズ).5796位
Giancarlo Stanton(ヤンキース).492

Brls/PA% (バレル率)
全打席のうち、打球速度が98mph以上で、打球角度がその打球速度に最適角度範囲内の打球の割合。打球速度(スイングスピードとバットの芯で捉える能力に依存)と打球角度の2つの組み合わせは、本塁打数、長打率との相関が高い。空振りの分だけ、数値が下がる。

Aaron Judge(ヤンキース)15.6 1位
大谷13.1 2位
Juan Soto(ヤンキース)12.2 3位
Bryce Harper(フィリーズ) 7.838位
Giancarlo Stanton(ヤンキース)11.4 4位

最高打球速度(kph)

Aaron Judge(ヤンキース)186.813位
大谷(ドジャース)191.8 3位
Juan Soto(ヤンキース)186.215位
Bryce Harper(フィリーズ)181.167位
Giancarlo Stanton(ヤンキース)193.1 2位

平均スィングスピード(kph)

Aaron Judge(ヤンキース)123.6 4位
大谷(ドジャース)121.810位
Juan Soto(ヤンキース)121.512位
Bryce Harper(フィリーズ)119.141位
Giancarlo Stanton(ヤンキース)129.9 1位

バットのへッドの移動距離 (m)

Aaron Judge(ヤンキース)2.50 3位
大谷(ドジャース)2.35 27位
Juan Soto(ヤンキース)2.23103位
Bryce Harper(フィリーズ)2.23103位
Giancarlo Stanton(ヤンキース)2.56 1位

空振り率(全スィング中の空振りの比率)

Aaron Judge(ヤンキース)32.5133位
大谷(ドジャース)28.8109位
Juan Soto(ヤンキース)22.6 63位
Bryce Harper(フィリーズ)28.5105位
Giancarlo Stanton(ヤンキース) 33.9

<スラッガータイプ>

パワー型:コンタクトの精度より、スイングスピードが上回るので、確実に打球に力を伝えきれず、空振り、ミスショット(内野ゴロ、ファウル)が増える。(Stanton、Judge)

ハイブリッド型:パワーとコンタクトの精度の両立を狙い、確実に打球に力を伝え、空振り、ミスショット(内野ゴロ、ファウル)が少ない。(大谷、Soto、Harper)

<4人との比較>

  • Stanton(バット長34インチ:86.36cm)は、大谷 (2024年は34.0インチ)に比べて、平均スィングスピードはかなり優るが、空振り率、バットの芯で捉える確実性で劣り、バレル率は劣る。
  • Judge(バット長35インチ:88.9cm)は、大谷に比べて、空振り率、バットの芯で捉える確実性で劣るが、平均スィングスピードと打球角度が優り、バレル率は優る。
  • Soto(バット長34インチ)は、大谷に比べて、空振り率、コンタクトした時のバットの芯で捉える確実性は優るが、打球角度が劣り、バレル率は劣る。
  • Harper(バット長34インチ)は、大谷に比べて、平均スィングスピード、バットの芯で捉える確実性、バレル率で劣る。

<大谷の身体能力、バッティングスキルとバッティングメカニクスの特徴>

(バッティングスキルの基本)                                          投球の球種スピードバーティカル・アプローチ・アングル(VAA)*とホリゾンタル・アプローチ・アングル(HAA)**から、投球がホームベースの通過する位置を予測して、体の中心で、投球を水平軸で見て、垂直に(インパクト角は0度)打ち返すと、一番パワーを伝えられる。同様に、投球を垂直軸で見て、VAA(下方向4~7度)に近い角度のレベルスイングをする。リリースのタイミングとスピードを見極めて、コンタクトするように、スィングする。

*バーティカル・アプローチ・アングル (VAA):リリースポイントからホームベース面に直立する仮想直線と実際の軌跡の垂直方向のずれの角度。下がマイナス。MLBの4-Seamの平均は、-5(2022)。                                  **ホリゾンタル・アプローチ・アングル (HAA):リリースポイントからホームベース面に直立する仮想直線と実際の軌跡の水平方向のずれの角度。投手の利き手側がプラス。                  

投手のテイクバックが小さく(ショートアーム)、動く球(ムービングファスト)に対応する為、ヒールダウン打法ノンステップで、軸足へ体重を移動し、前足をヒールダウンして、前足へ移動する)を採用。ロードポジション迄のテイクバックが小さいので、頭の位置の移動が無くて、目線のブレがなく、ミートし易いが、大きな動きで溜めを作れない分、パワーが伝わりにくい。

セットポジションで、ダウンスィングでの位置エネルギーの確保の為、バットを立てて、トップハンド(バットのヘッドに近い方の腕)の肘を肩より少々高い所に上げる(フライングエルボー)。

ロードポジションで、前足の太腿の内腿を絞って(内旋)、爪先で踏む込んで、投手側へヒールアップし、地面反力(地面をぐっと踏み込んだときに押し返される力)を使って後ろ足に体重をシフトし、臀筋と大腿筋にパワーを溜め込む。

ロードポジション

コンタクト迄、前足を投手側へステップしないように、くさびの役をして、肩をクローズドに保ち、頭を残す。後ろ足の太腿の内腿を絞って軸足を畝らして、前足への体重シフトを開始する。

投手側へ向かい始めた下半身と捕手側に向いている上半身の捻じれ(捻転差)で溜まったパワーで始動する腰の回転に合わせて、ダウンスィングを始動し、両肩と両ヒジ、グリップで『五角形』を作り、球の高低に見合ったレベルスィングに軌道を変える(V字スィング)。(インハイの球にミートするのは、至難の技)

腰の回転とダウンスィング開始

コンタクトの時に、両ヒジ、グリップの『五角形』を崩さない。後ろ足を前足方向へ僅かにスライドしながら、全ての体重を前足にシフトし、ヒールダウンする。

コンタクト

コンタクトの直後に、プッシュハンド(左手)を返さず、ホームランの軌道から外れないようにする。

コンタクトの直後

フォロースルーで、背筋力、太腿裏の筋力を使って仰け反り、上向きの角度をつけた強い打球を打ち返す。逆方向へのホームランも、これがあるから。

フォロースルー

読み誤って、投球が想定より速いか、筋力が稼働してない場合は、三振、ミスショット(内野ゴロ、ファウル)になり易い。

大谷は、高校時代のマンダラチャートには入れてなかったが、スピード160キロという目標の副産物で、着々と、背筋力、太腿裏の筋力アップと肩甲骨周り、胸郭の柔軟性アップを図って、MBLのスラッガーの位置を築いてきた。

<ドジャースのWorld Series制覇の中でのホームラン競争の楽しみ>

番狂わせがなければ、ヤンキースとドジャースが、順当にWorld Seriesに出てくると予想されるが、一発で試合の行方を変えてしまうホームランバッターの出来の差がどう勝敗を左右するかが楽しみの一つ。

今年は、右肘のリハビリ中という理由もあって、3年連続で、オールスターのホームランダービーへの参加を見合わせた。大谷のWorld Series制覇という目標を優先して、現状の耐久力勝負のホームランダービーがどれ程、身体に悪影響があるかという事を理解すれば、当然の成り行きである。滞空時間、ライナー、飛距離、逆方向、打球音といった大谷の積み上げられた身体能力、スキルを正当に評価できるホームランダービーに変わるのを望む。

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