MLB

2024年07月17日

先発パワーピッチャー大谷の立ち位置

奪三振率、防御率で上位を占め、サイ・ヤング賞候補にも挙げられる、球速でバッターを圧倒する先発パワーピッチャーの大谷の特徴について、データで分析してみよう。また、大谷とGlasnow以外は、バッター大谷にとっては、手強い強敵になり、ドジャースのWorld Series制覇には、打ち負かさなければならない相手のエースでなる。

Jacob deGrom、Sandy Alcantara、Spencer Striderと言った剛腕達は、トミージョン手術後のリハビリ中。トミージョン手術に縁がない数少ない剛腕のGerrit Cole(ヤンキース)は、肘の神経の炎症と浮腫から、6月20日に復帰したばかりで、顔触れが出揃っていない。レッズのHunter Greeneは2019年に、ドジャースのTyler Glasnowのは2021年に、ヤンキースのLuis Gil(ルイス ヒル、ドミニカ出身)、ホワイトソックスのGarrett Crochet(ギャレット クロシェイで、2020年のドラフト全体11位で取られた後、9月にメジャーデビューし、今年、セットアッパ―から先発に転向して、開幕投手)は2022年に、それぞれ、トミージョン手術をして、2024年シーズンは先発パワーピッチャーとして、活躍している。

2024年からMLBの先発ローテーションに入った山本、今永、そして、MLB13年目で、豪腕のイメージが薄くなったダルビッシュは、4-Seam(速球)の平均球速、奪空振率の点で、先発パワーピッチャー扱いしてしない。

奪三振かミスショット(内野ゴロ、ファウル)で打ち取る要素は、球速(空振りか想定のミートポイントより後ろに差し込んで、バットの芯で球を打たせず、ハードヒットさせない)と投球の精度(想定外の球筋かタイミングで、空振りを奪う、見逃させる、ミスショットか外野フェンスを超えないライナー、フライに打ち取る)である。バッターの能力や運に左右される結果ではなく、運動能力、スキルとスタイルに焦点を当てた。2023年ドラフト全体1位で、2024年5月11日にメジャーデビューしたばかりのPaul Skenes(ポール・スキーンズ、パイレーツ)、Garrett Crochet、Hunter Greene、Luis Gil、Dylan Cease(パドレス)、Tyler Glasnowの剛腕奪三振投手6人と、Statcast、FanGraphsのデータで、ピッチングスタイルを比較して、パワーピッチャー大谷の立ち位置を浮き彫りにしてみたい。

大谷 (ドジャース)
Paul Skenes(パイレーツ)対 大谷
Garrett Crochet(ホワイトソックス)
Hunter Greene(レッズ)
Luis Gil(ヤンキース)
Dylan Cease(パドレス)
Tyler Glasnow(ドジャース)

(2024年7月14日終了時Statcast。順位対象はMLB)

奪三振率(9回当り)

Paul Skenes(パイレーツ)12.1
大谷(エンジェルス)(2023)11.4  8位
Garret Crochet(ホワイトソックス)12.6 1位
Hunter Greene(レッズ)10.314位
Luis Gil(ヤンキース) 10.413位
Dylan Cease (パドレス)11.73位
Tyler Glasnow(ドジャース)11.8 2位
*ダルビッシュ(パドレス) 8.5
*山本(ドジャース) 10.2
*今永(カブズ) 9.122位
*松井(パドレス)8.9
*藤波(アスレチックス、オリオールズ)(2023)9.5

奪空振率(全スィング中の空振りの比率)

Paul Skenes(パイレーツ)29.0
大谷(エンジェルス)(2023)30.8  7位
Garret Crochet(ホワイトソックス)32.84位
Hunter Greene(レッズ)30.111位
Luis Gil(ヤンキース)29.315位
Dylan Cease (パドレス) 33.02位
Tyler Glasnow(ドジャース)30.78位
*ダルビッシュ(パドレス)24.4
*山本(ドジャース)26.7
*今永(カブズ)27.329位
*松井(パドレス)29.5
*藤波(アスレチックス、オリオールズ)(2023)31.0

球種構成比(主要球種)

Paul Skenes(パイレーツ)4-Seam 37.9%、シンカー 31.3%、スライダー 16.4% 、カーブ 10.9%
大谷(エンジェルス)(2023)スウィーパー 35.2%、4-Seam 33.0%、カットボール* 15.7%、スプリット 6.3%、シンカー 6.0%、カーブ 3.6%
Garret Crochet(ホワイトソックス)4-Seam 55.%、カットボール* 27.4%、スライダー 11.3%
Hunter Greene(レッズ)4-Seam 55.6%、スライダー 34.0%
Luis Gil(ヤンキース)4-Seam 51.9%、チェンジアップ 28.7%
Dylan Cease (パドレス)4-Seam 43.5%、スライダー 41.8%、カーブ 8.1% 
Tyler Glasnow(ドジャース)4-Seam 47.6%、スライダー 26.6%、カーブ 18.2% 
*今永(カブズ)4-Seam 54.7%、スプリット 33.1%

* カットボール:4-Seamとほぼ同じ球速で進み、バッターの直前でピッチャーの利き腕の逆方向に球1つ分変化する球種。スライドして沈むので、「高速スライダー」とも呼ばれる。空振りを奪うよりも、バットの芯を外して凡打に打ち取る変化球。

4-Seam 奪空振率(スィング中の空振りの比率)

Paul Skenes(パイレーツ)30.3
大谷(エンジェルス)(2023)27.0
Garret Crochet(ホワイトソックス)31.0
Hunter Greene(レッズ)25.6
Luis Gil (ヤンキース)      29.4
Dylan Cease (パドレス)22.5
Tyler Glasnow(ドジャース)20.9
*ダルビッシュ(パドレス)17.0
*山本(ドジャース)19.4
*今永(カブズ)19.1
*松井(パドレス)12.9
*藤波(アスレチックス、オリオールズ)(2023)25.5

4-Seam 平均球速(kph)

Paul Skenes(パイレーツ)159.5 5位
大谷(エンジェルス)(2023)155.8 24位
Garret Crochet(ホワイトソックス)156.121位
Hunter Greene(レッズ)157.213位
Luis Gil(ヤンキース)155.6 27位
Dylan Cease (パドレス)155.8 24位
Tyler Glasnow(ドジャース)155.036位
*ダルビッシュ(パドレス)151.3140位
*山本(ドジャース)153.770位
*今永(カブズ)147.7242位
*松井(パドレス)148.2227位
*藤波(アスレチックス、オリオールズ)(2023)158.4  -

スウィーパー 奪空振率(スィング中の空振りの比率)

大谷(エンジェルス)(2023)36.5

スプリット 奪空振率(全スィング中の空振りの比率)

大谷(エンジェルス)(2023)41.1
千賀(メッツ)(2023)59.5
*今永(カブズ)40.6

被本塁打率(9回当り)

Paul Skenes(パイレーツ)1.03
大谷(エンジェルス)(2023)1.23
Garret Crochet(ホワイトソックス)0.8418位
Hunter Greene(レッズ)0.8217位
Luis Gil(ヤンキース) 0.7916位
Dylan Cease (パドレス)1.1740位
Tyler Glasnow(ドジャース)0.9925位

ストライク率

大谷(エンジェルス)(2023)64
*藤波(アスレチックス、オリオールズ)(2023)60

<先発パワーピッチャーのタイプ>

パワー依存型:4-Seamをメイン。(Greene、Crochet、Gil、Glasnow、Cease、Skenes)

ハイブリッド型:変化球をメインに、4-Seamと変化球の2トップ。(大谷)

<6人との比較>

  • Greene(196㎝)、Crochet(198㎝)、Gilは、4-Seamの球速、縦の変化量で、空振りを奪え、Glasnow(203㎝)、Cease、Skenes(198㎝)は、4-Seamのメインに、スライダー、カーブでも、空振りを奪える。
  • 大谷の4-Seamの縦の変化量が少なく、空振り率は低い。スウィーパーの横の変化量が多く、奪空振率は高い。スウィーパーでバットの芯を外す能力があり、ハードヒットされにくいので、長打、本塁打を打たれにくい。

<大谷の身体能力、ピッチングスキル・配球の特徴>

(ピッチングスキル・配球の基本)                                                                                             バッターがパワー型かコンタクト型か、インコースかアウトコース狙いか、高目か低目狙いかを見極め、苦手なスピード球種バーティカル・アプローチ・アングル** とホリゾンタル・アプローチ・アングル*** を駆使して投げ分ける。さらに、ベストのタイミングでコンタクトされないように、リリースのタイミングエクステンション(ピッチャープレートからリリースポイント迄の距離。球持ち)に変化を付ける。

** バーティカル・アプローチ・アングル (VAA):リリースポイントからホームベース面に直立する仮想直線と実際の軌跡の垂直方向のずれの角度。下がマイナス。MLBの4-Seamの平均は、-5(2022)。                                      *** ホリゾンタル・アプローチ・アングル (HAA):リリースポイントからホームベース面に直立する仮想直線と実際の軌跡の水平方向のずれの角度。投手の利き手側がプラス。                                     

大谷の4-Seamのスピンは少なく、球筋は鋭く動かないので、読まれると、捉えられ易く、空振りを奪い易いスウィーパー(構成比33.0%、平均球速135kph)を多投して、押さえている(被OPS**** .565)。先発として長いイニングを投げて、シーズンをフルに投げ切る省エネと、肩肘に負担を掛けたくという理由から、前回の右肘の内側側副靭帯補強手術(トミージョン手術)以降、ハイコックポジション*****を採り入れ、2021年以降、ショートアーム******を採り入れた。2023年は、4-Seamのリリースポイントを前にして、地面に近づけ、ストライクゾーン高目に投げて、VAAを0度か+にする事で、(アッパースゥングに対して)奪空振率が上がってきた。

****** ショートアーム:腕の振りのコンパクトにして、テイクバックで腕を伸ばさず、肘を曲げたままの状態で上げ、早く小さくトップの位置を作る投球フォーム。無駄な動きと力のロスを省き、トップが安定して、コントロールが良くなる。加速距離が短い為、上半身の体幹を強くしておく必要がある。

相手チームの得点圏での場面、或いは終盤に、ギアアップして、球速を2キロ程上げ、100mph(161.9kph)近辺の4-Seamでヒッティングポイントを後ろに差し込み、打球にパワーを伝えるスィングをさせずに、失点の可能性が低い三振、内野ゴロを狙う。実際の得点圏での被OPSが.775、被本塁打率2.03で、全場面での被本塁打率が1.23で、キャリア最悪になっていたのが気に掛かる。

左に動く距離が長いスィーパーは、右打者のアウトロー、左打者のインローで、空振りを奪っている。スィーパーの精度(コントロールと狙ったところに投げる能力であるコマンドで、ストライク率******* は66%)が高く、振らざるを得ないので、結果として、被OPSは .565となっている。4-Seamに球速、球筋が途中迄近く、紛らわしい速球系変化球のカットボール(構成比15.7%、平均球速143kph)、スプリット(構成比6.3%、平均球速143kph)で、ピッチトンネル******** を使って、球種の判別を絞らせない。

スプリット(構成比6.3%)とカーブ(構成比3.6%)の精度が低く、全体のストライク率は64%と、投球の精度は平均レベル。

<ドジャースのWorld Series制覇に立ちはだかる豪腕投手との対決>

World Seriesの対戦カードになると予想されている、ヤンキースとドジャースの対戦で、剛腕先発ピッチャーの出来の差で、どちらが確実に4勝取れるかも、楽しみの一つ。ヤンキースは、ColeとGilで3勝を計算し、ドジャースは、GlasonowとGavin Stone或いは復帰予定のClayton Kershawで3勝の計算か? 

また、MLB全体最下位で、早くもプレイオフを諦めたホワイトソックスのCrochetのトレード先がドジャース、ブリューワーズ(ナショナルリーグ(NL中部地区1位)、パドレス(NL西地区2位)になるかで、大きく変わってくる。

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